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『ロッテ・ライニガーの世界』 山本順子教授より

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本日より、名演小劇場では『ロッテ・ライニガーの世界』をサウンド版ワールド・プレミア(世界初上映)としてロードショー。世界中の作家に大きな影響を与えた影絵アニメーション作家、ロッテ・ライニガー。彼女の数々の傑作をどうぞお楽しみください。



今回はスペシャル記事をご紹介!愛知県立大学 外国語学部ドイツ学科にて教鞭をとっていらっしゃる山本順子教授にお願いして、ドイツが生んだ伝説のアニメーション作家、ロッテ・ライニガーについての原稿を書いていただきました。




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人間の肉体を超えた、この世のものでないような空間の映像を私たちは今、3Dのコンピューター・グラフィックスで目にすることができる。夢想の空間が電脳による厳密な計算の果てに広がるとしたら、ロッテ・ライニガーのシルエット・フィギュアたちの住む空間も、やはり同様の眩暈が起きるほどの営みの果てに広がっていると言える。レース編みのように繊細な衣装をまとう王子や姫、羽根の一枚一枚が広げられた豪華な翼を持つ要請たちは、関節ごとに切り抜かれたパーツからなり、その手足を1秒間に24回ずつ動かされている。不思議なことに、制限のあるはずの動きが実に優美なので、作法の厳しい宮中に育ったかのようなのだ。

しかもこの驚愕の美学は、映画揺藍期の特殊撮影技術を十全に駆使して成り立っている。当時のアヴァンギャルド美学は「手術台の上のこうもり傘とミシンの出会い」のようと謳われたが、ライニガーの素材と洗練を兼ね備えた影絵は、さしずめ西欧のゴシック趣味と東洋の影絵劇の撮影台の上の出会いと称せられようか。

トーキーの時代になると、彼女の被造物たちは、モーツァルトの軽快なリズムに合わせて跳び回るようになる。これは、メロディーの展開する時間を厳密に計った上で人形を微動させ続けているということだ。同世代のナチ映画で知られる女流監督レニ・リーフェンシュタールもフィルム編集の際、同様の根気で、マーチのリズムと兵士の行進の多数のカメラによる映像を切り貼りしてぴったり合わせていた。一方の天才は紙に生命を与える美学を、他方の天才は人から生命を奪う体制の美学を追求したのだ。


―山本順子教授(愛知県立大学 外国語学部ドイツ学科)




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1899年6月2日ベルリン生まれ。幼少の頃より切り絵が好きだった彼女は、15歳で映像作家パウル・ヴェゲナーの所属するマックス・ラインハルト劇団に参加します。そして、ヴェゲナーの紹介で、後の夫となるカール・コッホらアニメーション研究者たちの協力を得た彼女は、1919年に初の短編影絵アニメ『美しき魂の飾り』を制作しました。その後1923年に長編『『アクメッド王子の冒険』に取り掛かり、4年がかりで完成させました。

第二次世界大戦までにドイツ、イタリア、イギリスなどで数多くの短編を制作し、G・W・パブスト監督の『ドン・キホーテ』(1933年)やジャン・ルノワール監督の『ラ・マルセイエーズ』(1938年)の影絵芝居の場面を担当するなど、幅広い活動を行います。しかし、対戦が勃発するとナチスの台頭で自由な制作は制限され、スイスやパリに逃れました。

夫婦で1948年にイギリスに移住し、ロンドンで活動を再開します。制作意欲は晩年も衰えず、また後進の指導にも熱心でした。

1981年6月19日、82歳で没。



関連リンク:
『ロッテ・ライニガーの世界』 公式サイト
愛知県立大学 公式サイト



文責:ホームページチーム・レイチェル

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