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『恋しくて』 中江裕司監督 舞台挨拶レポート

Koisikute現在公開中の中江裕司監督の『恋しくて』。石垣島を舞台に高校生たちのバンド活動や恋愛模様を描いている映画だ。中江監督といえば、1998年の『ナビィの恋』や2002年の『ホテル・ハイビスカス』で全国的な大ヒットをとばし、デビューから一貫して沖縄という場所と人を撮り続けている人物。名演小劇場での公開にあわせ、先日中江監督が劇場に来訪。2回にわたる舞台挨拶を行ってくれた。今回はその時の様子を掲載!


 
 

当日は開口一番、沖縄弁(うちなーぐち)でご挨拶。「石垣弁はとても難しくて・・・沖縄弁です。(笑)」と、場内の場をなごませてくれた所で映画について語ってくれた。
04_1 「美男美女だけが登場する沖縄映画だとリアリティがないじゃないですか。本土の人とは顔つきも違うし、言葉も違う、そういう作品を観て嘘っぽい、と感じる人もいると思うんですよね。」と、本作へのこだわりを教えてくれた。 



『恋しくて』は、石垣島出身のミュージシャン・BEGINの自伝的エッセー『さとうきび畑の風に乗って』にインスパイアされて誕生した作品。監督が約10年程前にこのエッセーを読み、「沖縄を舞台にした音楽モノの映画をやってみないか」という話が舞い込んだ時から、映画『恋しくて』の構想は始まった。



ストーリーは、石垣島に暮らす加那子が幼なじみの栄順と再会したことからはじまる。なんでも思いつきで行動する加那子の兄セイリョウの「バンドやるどー!」の一声で、牛小屋で猛練習を重ねるメンバー。彼ら5人の高校生を中心に、石垣島の人々との交流、そしてバンド大会への出場、さらには、甘づっぱいラブストーリーが描かれる青春映画だ。



今回は高校生役の5人を選ぶために、東京、那覇、そして石垣島の3ケ所でオーディションを開いた。主人公、栄順を演じる東里翔斗、そして、加那子役の山入端佳美、マコト役の宜保秀明、浩役の大嶺健一ら4人は全員沖縄県出身。もちろん彼等はプロの役者ではなかったが、いきいきと地元の子らしく演技している。「素人の子の可能性を感じた」という。



唯一、ストーリーの要となるセイリョウを演じた石田法嗣のみがプロの俳優。元々「セイリョウ役は素人ではできないだろう」、と考えていた所に石田法嗣が現れたという。「オーディションの時なんですが、色が白くてニコニコしていた彼が演技をさせるとその顔つきが一変したんです、しかも品があってね。」と彼を選んだ理由を教えてくれた。



その他にも、次々と登場する個性豊かな面々。監督曰く、「普通の映画なら出ないでしょ」というユニークな人物が登場し視線がスクリーンに釘付けになる。高校生バンドとして登場する「太ももファイブ」「パンパース」も忘れられないほどインパクトが強い。



06 「太ももファイブなんて、オーディションの時には結成してまだ3週間で1曲しか演奏できない状態でね、バンド名もなかったんですよ。そこでウチのカメラマンが「おまえたちはふとももが太いから「ふとももファイブ」だ!それしかないだろう!って決めたんですよ。(笑)二の腕ファイブでもいいぞ、とかね」と、バンドのユニークなネーミング経緯を教えてくれた。



さらに「太ももファイブ」の面白いエピソードが飛び出した。「オーディションの時にベースの子が『線がない、線がない』って騒いでて、つまりはシールドのことなんですが、それがなくて前のバンドから結局借りて、いきなりアンプに繋いでね・・・ものすごいハウリングでしたよ。それが終わったかと思うと、『立って弾けないから座って弾いてもいいですか~』と言ってきてね(笑)オーディションの時からあぐらかいて演奏してるんですよ。もうとにかくその時の様子が面白かったから、そのまま劇中でも座って弾いてもらってます。」是非とも彼らの演奏にも注目して欲しい。「強烈ですから」とは監督談。




劇中にはさまざまな歌が登場する。山本リンダの『狙いうち』、九州民謡の『炭坑節』、プリンセス・プリンセスの『DIAMONDS』等、そこに流れるのは「音楽」ではなく「歌」だ。さらには沖縄のディーバ(歌姫)与世山澄子さんが劇中にて『ワンダフル・ワールド』を熱唱。そのしびれる歌声で登場人物たちの言葉にできない想いを歌で伝えてくれている。 


選曲は音楽監督と相談しながら行ったそうだが、「昔の曲が多いかもしれないですけど、時代を生き抜いてきた、いい曲を選びました。別にいつの時代って限定しているわけじゃないんですけどね。」と、どの時代でも通用する歌を選曲したことを話してくれた。



05_3 「よく映画の中には、劇伴※が流れますよね。誰が演奏しているのか分からない曲が流れてくる。今回の僕の映画ではそんな風に突然理由もなく場面を盛り上げたりするためだけに音楽を流すっていうことはしなかったんです。音楽自体がない、全部歌なんです。必ず誰かが弾きながら歌っていたり、歌だけだったりする。」と、映画全体を通して歌が音楽よりもっと直接的に人に伝えることができる手段、と私達に伝えてくれている。「特に石垣島はそうなんですけど、『貴方のことが好きです』っていう気持ちも歌で伝えたりする。歌が言葉みたいな感じなんです。」

※劇伴・・・げきばんとは、映画やテレビドラマ、演劇で流れる伴奏音楽のこと。



01_2 「今回は3,500名の高校生たちがこの映画のオーディションを受けてくれて、実際にでてくれたメンバーは主要な5人とあとは面白いキャラクタを持ってる子何人かだったんですけど、オーディションを受けてくれたんだけどこの映画に受からなかった高校生たちがこの映画を作ってくれたような気がしてますね。僕らスタッフが1ヶ月以上オーディションを行って、僕は1,200名の高校生たちと会ったんですが、彼らからすごくいろんなものをもらったんです。彼らが考えている正義とか気持ちとか、それをもらったことで、この映画を作れたと思ってます。そういう意味では、映画に出てくれた高校生はもちろんだけど、出られなかった高校生たちの力もあった。だから今は彼らにとても感謝しています。」と、監督はしめくくってくれた。 





映画の原案となったBEGINの『恋しくて』、そしてこの作品のために彼らが書き下ろしたエンディング曲『ミーファイユー』(沖縄の石垣島方言で「ありがとう」の意味)、3人のメンバーもこう書き綴っている。『僕らが云いたかった事、それは、その変わらないもの、家族の愛や友人の思い、恋人達のトキメキへの感謝です。ただただ感謝です。』『恋しくて』プレスより)




0807_1舞台挨拶の後は、気軽にファンの方たちのサインに応じてくださった中江監督。
当日は、お馴染みのアロハシャツでのいで立ちで登場してくれました。
中江監督、どうもありがとうございました!







02_2 中江裕司監督 DATA:

沖縄在住の映画監督、映像作家。1960年、京都府生まれ。琉球大学農学部卒。80年に琉球大学入学と共に沖縄移住。パナリ本舗代表。琉球大学映画研究会にて多くの自主制作映画を作る。92年、沖縄県産映画「パイナップル・ツアーズ」の第2話「春子とヒデヨシ」でプロデビュー。94年、「パイパティローマ」を監督。98年には大琉球ミュージカル映画「ナビィの恋」を監督。沖縄県内を始め全国的な大ヒット作となった。沖縄では18万人の動員を記録。「タイタニック」を抜いて沖縄県の最多動員。2002年「ホテル・ハイビスカス」が全国公開され大ヒット。03年、石垣島の楽団のドキュメンタリー「白百合クラブ 東京へ行く」を自主制作。劇映画以外にも数多くのTVドキュメンタリー、ミュージッククリップ、CFなどを発表。06年、那覇市の閉館した桜坂琉映を、街中の劇場「桜坂劇場」として復活させ、株式会社クランクの代表取締役社長に就任。





関連リンク:『恋しくて』 公式サイト



文責:ホームページチーム・レイチェル

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