『世界でいちばん美しい村』舞台挨拶レポートのご紹介
2回目の上映終了後の舞台挨拶の様子を少しだけお伝えします。
※内容に触れている箇所がございます。ご注意ください。※ (C)Bon Ishikawa
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◎『世界でいちばん美しい村』というタイトル

石川監督:そうだよね。…どうです?映画を観ての感想は。
小原さん:私は彼と同じドキュメントの写真家だったのをやめて動物写真家に転身したんですけど、そのひとつの理由が、“自分が伝えたいことが、伝えられない”という思いがあったんですね。
特に日本のドキュメント、報道写真というのは悲惨なもの悲惨なもの、そういう風なものを求められちゃうんです。いくらこっちが違うものを使いたくても、死体がこんなにあっただとかそういったものが取り上げられちゃうんですね。
でも本当に良い報道写真というものは違うんですね。
彼はフランスの通信社のカメラマンで、私はアメリカの通信社のカメラマンだったんですけども。海外の報道っていうのは、悲惨なもの悲惨なものだけじゃなくてその中から見える希望とか人間の美しさだとかそれを必ず撮るんですね。
そういう写真はだいたいピュリツァー賞とかになるんですけども。
あの悲惨な現場で彼は、すごい美しいものを見つけてきたなとそんな風に思いました。
あの時何かできるとしたら、それは僕しかいなかったんですね。そういうことで、まず支援から入ったんですけども、その延長線上で、一人だと本当に無力なんだけれども、映画という方法をとればもっと大きな支援ができるんじゃないか。長い期間かけて、復興というものは時間がかかるものですけれども、復興支援もできるかもしれない。そんなことを思いながら撮影を始めたんですよ。
ところが、そんな思惑とは別にね、本当に彼らは素晴しかった。
アシュバドル、素敵ですよね。あんな綺麗な瞳をして純粋で。いたずらっ子なんですけどね。30年間写真を世界中で撮ってますけど、あんな魅力的な子はなかなかいないんですよ。よし、この子がいるから大丈夫だと思っていたら、それを食ってしまう、スーパースターが現れました(笑)
小原さん:この子ですね。(アシュバドルの妹プナムが載っているパンフレットを示して)
あのお父さんの手にグーッと寄って。あそこでじーっとお父さんの手を見せる。あれだけで、もうやられたって感じでしたね。
石川監督:プナムって本当に魅力的で可愛いですよね。皆メロメロになっちゃうんですけどね。編集やっていた人がプナムが出てくると“あ、天使が出てきた”って皆メロメロになっちゃう。
でも、プナムって写真撮ってると分かるんですけど、陰を感じるんですよ。ちょっとした陰をね。ただ可愛いだけじゃなくて。それが彼女の魅力でもあるんですけども、それをどう撮るかっていうのが非常に難しかった。このエピソードの時にね、(彼女は)お父さんの手の中に入って行った。僕は、一切演出していないんです、この映画ってのは。こうやってくれっていうのは、一回だけ。皆で歌を歌っている時だけ。アシュパニ(アシュバドルの姉)がなかなか歌わないんでお母さんがどんどんやっている、あのシーンだけなんですよ。
で、この時もお父さんの手の中に入ってこんな表情をしてくれたんで、僕は撮ったんです。

お父さんの顔は、お父さんの手の中にあるわけです。僕らは手からお父さんのことを考える。それは正しく写真の方法なんですね。
小原さん:(ポスター、チラシに使用されている写真を指して)やっぱり画が綺麗だなぁ。全く電気がない上に星が輝いていて。
私は蛍を撮っているカメラマンでもあるので、いかにあの光景が世界中にないかよく知っているんですね。360度、人工の光がない世界って世界中探してもほとんどないんですよ。
100キロ、200キロ先にある街の明かりでも空に反射しちゃうんですね。でも彼はその光景の中で、それを美しいものとしてしっかり捉えて。それを伝えてくれたと。あれはポスターにしたくなるね。
石川監督:今、小原さん言ってましたけど、やっぱり街の明かりがね、空に反射したりして。なかなか本当に真っ暗な世界ってないんですけども。
あんなに星が見えるのは理由があるんですよ、やっぱり。地震があったんで、全部の明かりが消えちゃったわけですよ。遠くの村の明かりも全部消えちゃった。だから、あの辺は星が見えるんですね。陸前高田の大工さんも言ってましたね‟全部の明かりが消えて、僕は初めて星の美しさに気が付いた。”って。
それが、実は僕が伝えたいことだったんだね。
小原さん:この映画の唯一の不満が一点あってね、エンディングすごく良かったでしょ?エンディングでアシュバドルと梵さんが出てくるシーンで小さかった画面がワーッと広がって。
すごく良いなと思って、もっと見たかったと思いますね。だから、この映画観て一番最初に言ったのは“石川梵の出番が少なすぎるよ”って。文句言ったんだけどね(笑)
彼はすごく美しい子ども達を見つけて、村の人を見つけて、ただこの映画にはもう一つ美しいものがあって、それは石川梵の心かなぁって思ってます。
石川梵がなければこの村のことは伝わらなかったし、そしてプナム基金、パンフレットの売上げ(の一部)をプナム基金ていう奨学金に充ててますけれども。そういった中の子どもたちが必ず、その経験を次の世代に活かすと思うんですよね。日本からこういったお金を支援してもらったっていうことが、今度絶対必ず次に活きるしね。
だから彼らはお金をもらうだけでじゃないんですよ。見知らぬ人から愛を注いでもらっているんですね。それは彼らの人格形成にものすごく役立っている。あぁ、支援てそういうことなんだなって思ってね。
で、その人達の力が今度逆に私達が必要になってくるんじゃないかなとかね。そんなことを感じます。
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*プナム基金*
ラプラック村の才能はあるのに教育機会に恵まれない女児を対象に、その学業資金を支援する基金です。

ご好評につき5月5日(祝・金)まで延長が決定しました!ご来場をお待ちしております。
文責:エヴァラーユ